大阪市立近代美術館建設準備室(一)

2012年4月27日更新

 神戸市立博物館(二) の続き

森琴石は生まれは兵庫ですが、画家として活躍したのは大阪なので、大阪でのご協力を得なければなりません。
神戸市立博物館の成澤勝嗣先生から紹介頂いた、大阪市立近代美術館 建設準備室の心強いご協力者に巡りあう事が出来ました。

先生方を紹介して頂く
「有馬の名宝」展の終わりごろ、神戸市立博物館の成澤勝嗣先生より「大阪市立近代美術館 建設準備室に、森琴石に大変興味を持つ方が二人おられます」と、教えて頂きました。

連絡を取る
「有馬の名宝」展終了に近い頃、大阪市立近代美術館建設準備室の橋爪先生に電話致しました。森琴石のひ孫(の妻)である事を名乗り、是非お目にかかりたいと伝えました。
既に成澤勝嗣先生から連絡済みで、すぐに分かって下さいました。
準備室は美術館ではないので、土曜・日曜日は休日の為、先ずは平日に筆者一人でお伺いする事として、訪問日を約束しました。

準備室訪問
1998年11月中旬、大阪市立近代美術館 建設準備室を訪問。
準備室は大阪市役所の3階、教育委員会社会教育課内にあり、準備室の隣の狭い資料室に通されました。資料室は会議室や応接室を兼ねているようです。
資料室の出入り口と窓以外には書棚が置かれ、資料や書物が天井近くまでびっしりと並べられていた。
神戸市立博物館とは全てにおいて大違いの様相に少々とまどいました。

先生方と対面
熊田司、橋爪節也両先生と対面。
先生方から名刺を頂き森家の意向・・・・森琴石の作品探しや業績、足跡を調査し、数年後に1冊本にまとめて出版したいので是非ご協力頂きたい・・・・等をお伝えしました。

父の著書が書棚に
一通り用件を述べましたので、ほっとしてふと目先の書棚に向けると、「日本石版画の思い出」という文字が飛び込んできました。思わずそれが筆者の父野村廣太郎の著書である事を伝えました。
先生方、少々怪訝な表情でしたので、私が両親の遅い年齢で生まれた末娘で、長兄とは19歳離れていると、言葉を付け添えたと記憶しています。
近代美術と印刷美術とは関連しあっているらしく、父の事も知っておられたようで、先生方は非常に驚かれていました。
そのような偶然の出来事もあり、その後の会話がスムーズに運んだように感じました。


当時の会話と備忘録より
★橋爪節也先生
●学芸主任。明治時代の(画家の)研究者、墨香画譜など所蔵、大阪を愛する人・・・・とメモ書きされている。
●東京芸大出身の先生とお聞きしていましたが、気さくに対応して頂きましたので、すぐに緊張感も解きほぐれました。
●「森琴石は大阪の近代美術で最初に調べられないといけない画家で、森琴石を調べる事により、時代の背景や他の画家が引っ張り上げられるようにして解明出来るのです。明治期の画家では最初に調べるべき画家で、今まで疎かにされ過ぎた」
「南画家が銅版画もやっていたというのは、森琴石以外に誰もおらず、他に類を見ない画家です。もし、近代美術館が完成されれば、森琴石は常設展ではトップに紹介される画家です。」
と、近代美術館建設の企画パンフレットを見せて頂き、力説して下さいました。

橋爪先生から頂いたもの
1:森琴石の伝記(橋爪先生作成によるもの)
森家では、この橋爪先生作成の伝記をベースにして、その後取得していった資料から少しずつ内容を膨らませていきました。
2:近藤翠石の伝記
この後の調査に大変役立ちました。
3:干支変換表
 「今後の調査に必要なので、これは森さんにどうしても持っていて欲しいものです」
  との解説付きで。
  作品調査では無くてならないもので、未だに非常に重宝しています。
4:大阪市立近代美術館建設準備室主催の<展覧会図録>
 森琴石の作品が収録され、中には解説が書かれている。
 解説が森琴石を知る上で、非常に勉強になりました。
5:東京神田の某古書店「古書目録」
ご所蔵の『墨香画譜』は、この古書目録を見て買われたそうです。


★ 熊田 司先生
●橋爪先生の上司。
●学芸課長。森琴石の銅版画や詩書など多数収集・・・・・とメモ書きされている。

●熊田先生より
:関西学院大学出身で、西宮市の大谷記念美術館に赴任早々「高橋由一」展を企画開催され、その頃から銅版画家【響泉堂】に興味を覚え、版画や資料等を収集されていかれたそうです。

:「高橋由一」展開催中、父森 寿太が訪館し、熊田司先生と会われたそうです。
ご挨拶程度で詳しい話はしなかった、今思うとそれが非常に残念だ・・・と言われました。

:又「昨年初夏の頃、成澤、橋爪先生が、豊中の森家にお伺いさせて頂いたそうですが、準備室から2名も留守には出来ないので、行く事が出来ませんでした」とも話されました。

:近年発行された 石川梅次郎編校「作詞を琢って 詩韻含英異同弁」という書物を見せて下さり、「この本は、明治12年頃に出版された森琴石【響泉堂】刻、森琴石画の「詩韻含英異同弁」の口絵類を、そのまま使用している。今の時代に至るまで森琴石のデザインが使用せれているという事は、すごい事です」と説明して下さいました。

 

森琴石調査及び画集刊行に向けて・・・ご協力を頂く
熊田、橋爪両先生から今後、森琴石とその周辺、森琴石の南画や銅版画全般への調査協力と『森琴石画集』刊行へのご協力を約束して頂いて帰路に向かいました。

心強い先生方の出会い、その日は生涯忘れる事の出来ない、興奮覚めやらぬ一日となりました。

 

以後、大阪市立近代美術館建設準備室、又お二人の先生方とは、森琴石作品や資料収集、響泉堂書物などの情報交換を頻繁に交わし、さまざまな形でご協力を頂く事になりました。

 

 

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