「日本の伝統文化を問い直す」(臨川書店、重田みち編)呉孟晋氏の最新論文=「森琴石ゆかりの来舶清人の動向について」が掲載されました

2024年5月13日 更新

 

「日本の伝統文化」を問い直す」(重田みち編、臨川書店)…第20章に呉孟晋氏の最新論文=「森琴石ゆかりの来舶清人の動向について」が掲載されました

 

 

 

■京都大学人文科学研究所准教授 呉孟晋(くれ もとゆき)氏より、新刊書『「日本の伝統文化」を問い直す』を、我が家にお送りくださいました。

■同著は、京都大学人文科学研究所を拠点に、多数の研究者が、数年の歳月をかけた研究成果を、論文にまとめ発表されたものです。

■呉孟晋氏の論文は、来舶清人の交流がテーマです。
『「日本の伝統文化」を問い直す』では、森家所蔵の資料のほか、来舶清人が各地で交流した日本の文人たちの資料を加えて紹介されています。

■それら日本の文人たちは森琴石とは非常に親密な間柄で、それはとりも直さず森琴石の交流の広さを証明するものでもあります。

■今回の刊行に先んじて2022年6月、国立京都博物館発行の学叢』第44号では呉孟晋氏・陳捷(ちん しょう)氏により…「森琴石ゆかりの中国書画および書簡資料について―来舶清人の交流を中心に―」で、森家所蔵の資料を基に論じられています。
(※『学叢』 第44号は、Pdf版にて全文紹介される予定です)

■呉孟晋先生は、2012年京都国立博物館で開催された「中国近代絵画と日本」展で、「月瀬真景図」を取り上げて頂いた事を皮切りに、新聞の連載記事」や論文、国内外のシンポジウムなど、森琴石と来舶清国人について、幅広い方面で研究成果を報告されておられます。

■私どもが知る限り 既存の論文では、<森琴石>は名前すら出てきませんでしたが、14,5年前より、陳捷先生、呉孟晋先生、西上実先生、などにより、「森琴石と来舶清人」について「豊富な実資料」を基に、森琴石が果たした業績や時代の背景、業績の意義について詳しく論及されてきました。

●交友と協業のコレクション
野﨑家と森家にある来舶清人の書画について「中国書画コレクションの時空」(2021年10月17日)
関西中国書画コレクション研究会設立10周年記念 国際シンポジウム 報告書(2022年4月) p139~152

●「東亜文化意匠象的博物書写与物質文化」
臨摹與寫生之間:試論森琴石的中國繪畫學習中研院文哲所圖書館數位典藏網站 (sinica.edu.tw)
―報告書の刊行が予定されています―

■森琴石ホームページでは「来舶清人」という項目を追加致しました。

森琴石の経歴を語るうえで「来舶清人」との書画交流は、美術史において必要不可欠な事だからです。

森琴石は「来舶清人」を各地の文人や趣味人(名家)を紹介した「中心人物」だった事がわかりました。

先生方の資料に基づいた詳細な研究報告は、画像を含め、新たな知見を提供して頂いております。

森琴石が交流した来舶清人について、呉孟晋先生よりご自身の論文に基づき簡単にまとめたものを頂戴しております。

この度、当ホームページの新設「来舶清人」でご紹介させて頂きます。
是非ご一読ください。

 

💞呉 孟晋先生(京都大学人文科学研究所 准教授)
プロフィール



■ 学位
博士[学術](東京大学)
■ 専門分野

東アジア美術史
■ 研究テーマ

中国絵画史の研究


中国絵画史の研究
東アジア地域において長らく美的規範とみなされてきた中国絵画の史的展開について考えてゆく。画題や表現、筆者や流派に則した作品研究はもちろん、収集や鑑賞、伝来、評価といった政治や社会との関わりのなかで文物として派生してゆく問題もふくめて、中国絵画が有する表象性から中国文化のあり方を明らかにしてゆきたい。こうした課題を顕在化するためには、たとえば、清末から民国初期にかけての近代をふくむ王朝交替期という時期的特性や、「唐物」として中国文物を珍重してきた日本をはじめとする中国以外での地域的特性を手がかりとすることが考えられるだろう。日本でおこなう中国絵画研究の意義を自問しつつ、書跡や詩文といった隣接する芸術分野や領域にも関心をもちつづけてゆきたい。
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「日本の伝統文化」を問い直す

(「日本の伝統文化」を問い直す―臨川書店 (rinsen.com)  より転載させて頂きました)

重田みち編
A5判・上製・カバー装・512頁
税込7,700円(本体7,000円+税)
ISBN978-4-653-04568-7【2024年3月刊】

芸道など明治期以降「日本の伝統文化」と見なされてきた諸文化は、曖昧なままの認識のため歴史実態と大きな隔たりがあるのではないか―― 近代の言説により不可視化された文化の様々な側面を、「非近代の視点」「日本列島の外からの視点」をもって相対化し、東アジア諸学の連関的考察を試みる。京大人文研拠点共同研究の成果論文集。

<目次>
総 論 重田みち
儀礼・制度
第1章 平安京の中軸線と南望天闕の伝統について 外村 中
第2章 『古今著聞集』が語る「儒教と日本」 水口拓寿
第3章 鎌倉時代における泉涌寺流の喫茶・茶礼・供茶のひろがり─宋式の寺院生活と儀礼実践の視点から─ 西谷 功
第4章 茶道家元制度の近代的展開 神津朝夫
宗教・思想
第5章 大阪壺井八幡宮八幡神及諸神坐像にみる神仏関係 田中健一
第6章 『沙石集』和歌陀羅尼説とその背景 柳 幹康
第7章 明治の儒教的伝統と二つの国民観─井上毅と中江兆民に注目して─ 福谷 彬
美  術
第8章 龍門石窟への視線と中国文物をめぐる営為  ─「日本上代美術」基準の文物観から遺跡調査・現地保存へ─ 稲本泰生
第9章 1937 年パリ万博日本館における「日本の伝統」 高階絵里加
第10章 日本美術の向こう側─中国文化圏のなかの日本美術─ 宮崎法子
諸芸・芸能
第11章 雅整体運動の展開と文人花─辻井弘洲の構想を中心に─ 井上 治
第12章 寺院資料に見る「阿弥陀仏号」の人物─「同朋衆」と「時衆」再検討の手がかりとして─ 今枝杏子
第13章 日本書道史の語りを支えた日本風・中国風言説と伝統観  ─戦後版平凡社『書道全集』日本巻総説を例として─ 成田健太郎
学術・書物・文学
第14章 「日本は写本文化、中国は印本文化」という二項対立を問い直す 王孫涵之
第15章 室町後期における絵入り冊子本の登場について 佐々木孝浩
第16章 燕京大学図書館の蔵書形成を通してみる学問の近代化と伝統文化─「美術類」を例に─ 河野貴美子
第17章 松崎慊堂の和習重視をめぐって 古勝隆一
第18章 漢字圏古医籍の定量と比較─その同・異の人文地理学研究─ 真柳 誠
文化接触・人の移動
第19章 廻国僧と日本中世仏教 上川通夫
第20章 森琴石ゆかりの来舶清人の動向について 呉 孟晋
第21章 松崎鶴雄が考えた古代の歌声─「伝統」漢学の『詩経』解釈を超えて─ 陳 佑真
コラム 火中の栗を拾う─京大人文研で「日本の伝統文化」を問い直すということ─ 菊地 暁
あとがき/索 引

 

  • 執筆者 (執筆順)   ※所属は2024年刊行時のものです重田みち(京都芸術大学大学院教授。専門:国文学・日本文化史・日本思想史・日中比較文化史)
    外村 中(ドイツ・ヴュルツブルク大学漢学系上級講師。専門:古代東洋芸術文化史)
    水口拓寿(武蔵大学人文学部教授。専門:東アジア思想史学・文化人類学)
    西谷 功(花園大学文学部准教授/泉涌寺宝物館・学芸員。専門:仏教文化史・仏教美術史・仏教史)
    神津朝夫(茶道史家。専門:日本文化史)
    田中健一(京都大学大学院文学研究科准教授(執筆時:文化庁文化財第一課文化財調査官)。専門:日本美術史)
    柳 幹康(東京大学東洋文化研究所准教授。専門:中国仏教)
    福谷 彬(京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門:中国哲学史)
    稲本泰生(京都大学人文科学研究所教授。専門:仏教美術史)
    高階絵里加(京都大学地球環境学堂、人文科学研究所教授。専門:美術史)
    宮崎法子(実践女子大学名誉教授。専門:中国絵画史)
    井上 治(嵯峨美術大学教授。専門:芸術哲学)
    今枝杏子(天理大学非常勤講師。専門:仏教文学)
    成田健太郎(京都大学大学院文学研究科准教授。専門:中国古典学・中国書論史)
    王孫涵之(弘前大学人文社会科学部助教。専門:中国古典文献学)
    佐々木孝浩(慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授。専門:日本書誌学)
    河野貴美子(早稲田大学文学学術院教授。専門:和漢古文献研究、和漢比較文学)
    古勝隆一(京都大学人文科学研究所教授。専門:中国古典学)
    真柳 誠(茨城大学名誉教授。専門:医史学)
    上川通夫(愛知県立大学日本文化学部教授。専門:日本中世史)
    呉 孟晋(京都大学人文科学研究所准教授。専門:中国絵画史)
    陳 佑真(帝京大学文学部助教。専門:中国思想史)
    菊地 暁(京都大学人文科学研究所助教。専門:民俗学)

 

備考
第10章 「日本美術の向こう側─中国文化圏のなかの日本美術─」 で、
著者の
宮崎法子氏は、森琴石門下の波多野花涯(後華涯に)について森琴石、来舶清人とあわせて言及されておられます。

 

 

 

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