2021年10月4日 更新
作品紹介 銅版画でもご覧いただけます
「新撰梅渓 月瀬勝景真図」
・・・・明治20年3月、桂雲堂発行、森琴石画・銅刻
・画像ご提供者=熊田司氏
熊田 司氏 ご提供
「新撰梅渓 月瀬勝景真図」=明治20年3月刊
・・森琴石【響泉堂】の 高い技術力と労苦を知る作品
■7月末、美術史家で前和歌山県立近代美術館館長の、熊田司先生より「久しぶりに響泉堂刻の作品を入手しました」と、明治20年3月刊『新撰梅渓 月瀬景勝真図』の画像をお送り頂きました。
■月ヶ瀬梅渓は 森琴石が最も愛した景勝地で、古くから文人墨客が訪れる名勝地です。森琴石の周辺の文人、親交した清国の文人らが挙って訪問しました。森琴石の師匠鼎金城は、1852年(嘉永5)に月ヶ瀬に行き「歳寒二雅図」を描きました。森琴石9歳、鼎金城に入門3年目の頃です。
■月ヶ瀬をテーマにした森琴石の作品は、銅版画を含めかなりの数に上ります。最も有名なのが、明治15年10月「第一回農商務省内国絵画共進会」に出品し、褒状を受賞した「月ヶ瀬真景図」です。
森琴石 控え帳
左頁=明治15年<内国絵画共進会>・明治17年<奈良博覧会>の記述
「中国近代絵画と日本」展 | 森琴石 What’s New (morikinseki.com)
【黄超曾(吟梅)】・・・見落としていた交流者 | 森琴石 What’s New (morikinseki.com)
■銅版画作品では、神戸市立博物館蔵の『新撰梅渓 月瀬勝景真図』が、森琴石の優れた銅版画として、専門家筋から高い評価を頂いています。
■今回ご紹介の『新撰梅渓 月瀬勝景真図』は、神戸市立博物館蔵(以下 神戸市博本とする)と、同年・同月・同名の作品ですが、僅かな違いがあるようです。その相違点の説明を頂いていますので、下方に図を添えてご紹介させて頂きます。
■今回の『新撰梅渓 月瀬真勝景真図』は、奈良 ”桂雲堂” 豊住伊兵衛が発行人で、息子の豊住幾之助は月瀬の専売所として名が出ています。神戸市博館本は、息子の豊住幾之介が大阪で出版しています。
■『新撰梅渓 月瀬勝景真図』の奥付には、専売所として、
月瀬=窪田兵蔵・今岡利兵衛・梅屋久兵衛、尾山=西岡武平、長引=梅屋長三郎、伊賀=豊住伊兵衛の氏名が書かれています。
●月瀬の窪田兵蔵氏は、森琴石と親交した方です。
桂雲堂・豊住幾之助氏、豊住伊兵衛氏
歴史書充実ファンは全国に/世界遺産の街・奈良随一の老舗書店/桂雲堂豊住書店
豊住書店の創業者は、松尾芭蕉門下8代目の弟子にあたる豊住伊兵衛氏。
江戸時代後期に三重県伊賀上野に本店をかまえ、ほかに津と大阪、奈良の3箇所に店があった。
・何代目かの伊兵衛が明治初期に奈良に移り、この店が受け継がれて現在に至っている。
・2代目が豊住幾之助。現在のご当主豊住勝三氏は5代目に当たる。
平成21年10月1日号::日本書店商業組合連合会「本屋さんへ行こう!」::全国書店新聞 (n-shoten.jp 末尾の方)
残念な事に、2021年10月31日を以て、奈良の老舗「豊住書店」が閉店、150亘る年超の歴史に幕をおろされました。長年に亘るご縁に感謝とお礼を申し上げます。
(この分2021年11月3日 記述)
窪田兵蔵氏
明治20年時点での 月ヶ瀬「騎鶴楼』当主
騎鶴楼(きかくろう)=家業は初め鍛冶屋を営み、屋号を「かじや」と称した。
・のち傍ら旅館「魁春洞」を営む。のち「魁春洞」を「騎鶴楼」に改める。
・当時の当主窪田兵蔵氏は、「鍛冶屋兵蔵」名で、
・伴林光平著「標柱 月瀬紀行」(明治14年/伴林光男刊行)など
・月ヶ瀬に関する出版にも関与している。・・(森琴石HP)
今岡利兵衛=長尾天満宮
梅屋久兵衛・西岡武平・梅屋長三郎 は詳細不明
■月ヶ瀬の景勝や文化財保存に多大な貢献をされている、窪田良蔵氏より、
「新撰梅渓 月瀬勝景真図は、奈良市の ”沖森文庫” に所蔵されており、月ヶ瀬の”梅の資料館”ではこれまで数回展示されました」と、お知らせ頂きました。
●窪田良蔵氏は、窪田兵蔵氏のひ孫に当たり、平成年3月、私共が訪問させて頂いた時からご懇意にさせて頂いています。
沖森文庫
伊賀上野で古書店を営むかたわら郷土史家としても活躍された沖森直三郎氏により
蒐集された芭蕉翁や伊賀にかかわる俳諧等資料のことをいいます。
『十七文字の贈りもの』発刊のご案内 | 伊賀市 (iga.lg.jp)
・・Whatt’s Nem 文化財遺墨の宝庫 月ヶ瀬「騎鶴楼」
・・森琴石 調査情報【平成17年 4月】 (morikinseki.com)
■奈良の書肆「阪田購文堂」「金澤昇平」「橋井善次郎」などは、響泉堂刻で、森琴石は多数の書誌に携わっています。
阪田購文堂
●阪田一郎
大和全国地図
(奈良県立図書情報館まほろばライブラリー検索 (pref.nara.jp)
●坂田作次郎
森琴石調査情報【平成18年 1月】
明治20年、響泉堂刻「新撰梅渓 月ヶ瀬真景図 全」の出版人「豊住幾之助」は、一族で書肆を経営しており、出版書物の奥附には「大阪・伊賀・橋本」が住所となっている …
●金澤昇平・橋井善次郎
奈良名所独案内
(奈良県立図書情報館まほろばライブラリー検索 (pref.nara.jp))
■森琴石は、明治18年奈良博覧会の審査員を務めるなど、奈良との繋がりが深い。しかしネットで見る限り明治18年の「奈良博覧会」に関する資料は見出だせません。
森琴石は「奈良博覧会」等、各種展覧会の審査委員を多数務めていた
森琴石控帳 履歴より(右頁 右から7行目)
(控帳50、51頁)
赤線=展覧会の名称と審査委員の記述か所
明治18年5月:奈良博覧会絵画部審査員
明治23年8月:全国絵画共進会審査員
明治26年2月15日:日本美術協会大阪支会第1回展覧会絵画部審査員
明治30年4月:京都市後素協会開設の全国絵画共進会審査員
明治32年4月:愛知県名古屋全国絵画共進会審査員
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『新撰梅溪 月瀬勝景真図』
明治20年3月、桂雲堂発行、森琴石画・銅刻
画像ご提供=熊田司氏
・全体図
・・シート(紙)寸法 37.0×48.3cm イメージ寸法 33.8×46.3cm (冊子寸法)18.6×8.0cm
表紙 ・・・・袋
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・森琴石先生図画
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新撰梅渓 月瀬勝景真図
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・版権免許 桂雲堂発兌
奥付
編輯兼図者 大阪府平民 森琴石 東区伏見町3丁目3番地
出版人 大阪府平民 豊住幾之助 東区北久太郎町4丁目14番地
専売所 月瀬 窪田兵蔵 仝 今岡利兵衛 仝 梅屋久兵衛
尾山 西岡武平 長引 梅屋長三郎 イガ 豊住伊兵衛
熊田 司氏による解説
高い技術力と労苦を知る銅版画
一旦腐食した銅版凹部を、道具(スクレーパ、バニッシャーなど)で平らに均した上、
もう一度防蝕剤を塗布して線刻し、腐食させるという面倒な工程を経ての変更です。
響泉堂琴石の技術的な力量と苦労が解ります。
●今回の「新撰梅渓 月瀬勝景真図 全」は、オリジナル作品である。
●神戸市立博物館蔵は、今回のものを一部改刻した再版本である。
その違いは
1.右上「上野 花香山人誌」とある文章冒頭に、神戸市博本では「凡例」の二文字を ・・附加している。
2.中央、風景の上部・和歌の下部にある「梅溪物産表」の囲み罫を、神戸市博本では・・右に拡張、「梅肉数品」~「山芋」の五品目を追刻し、収まりきらなかった
「梅溪物産表」の表題を上部欄外に新たに刻している。その結果周辺がかなり窮屈にに・・なっている。
3.左上の欄外に、神戸市博本では
「梅花満開平年彼岸前後トス大阪ヨリ大文字屋峠越近シ」を追記している。
4.左上罫囲みの地図を、神戸市博本では改刻している。罫の左辺中央の大半を
抹消して外郭の罫につなぎ、空いたところに新しいルートを彫り加えている。
●おそらく注文主の意向で「観光パンフレット」に必要な事項を附加したものだと思わる。
熊田司氏蔵『新撰梅渓 月瀬勝景真図』
今回&神戸市博本との相違点
参考
神戸市立博物館蔵『梅渓月瀬勝景真図 全』
・36,6cmx46,6cm。
・明治20年3月 響泉堂刻製鳥瞰図(注:鳥瞰図と記述)
・出版人:大阪豊住幾之介
・鳥瞰図の凡例は上野の花香山人。斎藤拙堂の「梅渓遊記」など文人墨客の詩歌を載せている
「特別展 有馬の名宝-蘇生と遊興の文化」図録(神戸市立博物館展覧会=成澤勝嗣氏解説)
相違点(画像)
お断り:神戸市博本は『森琴石作品集』Ⅰ銅版画 を森家がスキャナーで取り込んだものです。
スキャナーの精度が低く、写りが非常に悪い事ご承知ください
右上
「上野 花香山人誌」
文章冒頭
熊田氏蔵 神戸市博本=「凡例」の二文字を付加
梅渓物産表
熊田氏蔵 神戸市博本=「梅肉数品」~「山芋」の五品目を追刻
欄外
熊田氏蔵 神戸市博本=「梅花満開平年彼岸前後トス大阪ヨリ大文字屋峠越近シ」を追記
囲み地図
熊田氏蔵 神戸市博本=罫の左辺中央の大半を抹消して外郭の罫につなぎぎ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 空いたところに新しいルートを彫り加えている
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森琴石ブログ
what’s new 記述ヵ所
奈良市月ヶ瀬「名勝月ヶ瀬梅渓墨跡展」に「鼎金城」の画が展示
投稿日: 2015年3月7日 作成者: morikinseki
2015年3月7日 更新 奈良市 月ヶ瀬 梅の資料館 「名勝月ヶ瀬梅渓墨跡展」 ・・・・・・・・・森琴石師匠「鼎金城」の画が展示 ■梅の見頃となりました。 ■奈良市の月ヶ瀬梅渓では現在梅まつりの真最中で、数 … 続きを読む →
文化財遺墨の宝庫 月ヶ瀬「騎鶴楼」
投稿日: 2012年2月5日 作成者: morikinseki
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森琴石ホームページ記述ヵ所
増田東洲
森琴石「響泉堂」 門人(門弟)紹介–近畿地区 (morikinseki.com) 増田東洲
森琴石調査情報【平成17年 4月】
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森琴石調査情報【平成20年 2月】
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森琴石「響泉堂」資料紹介詩賛編
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森琴石調査情報【平成18年 1月】
明治20年、響泉堂刻「新撰梅渓 月ヶ瀬真景図 全」の出版人「豊住幾之助」は、一族で書肆を経営しており、出版書物の奥附には「大阪・伊賀・橋本」が住所となっている …
森琴石展示・掲載・所蔵情報
展示内容: 森琴石・森月城・立脇泰山・村上華岳・水越松南・大橋良三・昇外義(のぼり がいぎ): ※森琴石の作品は「月ヶ瀬真景図」・「松梅繁栄図」の2点展示.
森琴石調査情報【平成23年 2月】
地域 朝刊 1/14三田版、丹波版 2/9神戸市北区版 記事=松本寿美子氏); ☆読売新聞=『森琴石作品集』の紹介と、作品集の中から、特に印象的であるとする「月ヶ瀬真景 …
森琴石調査情報【平成19年 12月】
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森琴石調査情報【平成12年】
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森琴石調査情報【平成20年 4月】
○明治15年8月 号栞石: 「月ヶ瀬詩画」=画帖(紙本水墨)/月ヶ瀬「騎鶴楼」蔵(画帖10号5枚目): 落款=「壬午三月浪華栞石詩画」.
森琴石調査情報【平成17年 12月】
「月ヶ瀬」との関係については先にご紹介したが 注1、銅版による「奈良名所独案内 全 注2」を作成し、当ホームページ「平成11年度の展覧会情報」に名が出る「岩本 …
森琴石調査情報【平成17年 10月】
石橋教=石橋雲来のこと・「作品紹介、文人画<月ヶ瀬真景>」・「平成13年1月」・「平成15年7月□3番目、大村楊城」・「平成17年3月□2番目、□4 …
「響泉堂」森琴石紹介 Mori Kinseki | ―銅版画編
図の法量は竪一尺二寸横一尺六寸、月ヶ瀬全山の梅花満開の佳景を描出し、上欄に斉藤拙堂(さいとうせつどう)はじめ諸家の詩文、和歌、俳句の類を録し、梅渓と各村落の …
森琴石調査情報【平成19年 2月】
明治15年10月(1882): 「第一回農商務省内国絵画共進会」開催 →森琴石は「月ヶ瀬真景図」で褒状受賞). 明治17年(1884): 「第二回絵画共進会」開催 …
森琴石調査情報【平成18年 11月】
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森琴石調査情報【平成18年 12月】
石橋雲来=作品:「文人画<月ヶ瀬真景>」・資料:「森琴石弾琴図」・「平成13年1月」・「平成15年7月□3番目、大村楊城」・「平成17年3月□2番目、□4 …
奈良 記述ヵ所
森琴石は「奈良博覧会」等、各種展覧会の審査委員を多数務めていた
投稿日: 2015年6月10日 作成者: morikinseki
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森琴石調査情報【平成17年 12月】
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森琴石調査情報【平成18年 1月】
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森琴石「響泉堂」資料紹介下書き
一, 明治十八年五月二十八日, 奈良博覧会二出品シ褒状ヲ贈ラル
森琴石調査情報【平成16年 4月】
注1, 森 加津=琴石歿3年後の、大正13年1月、奈良県の西籐氏(銀行勤務)と結婚する。加津は明治37年6月、森琴石長女「昇 しょう」の次女として生まれるが、
森琴石「響泉堂」展示・掲載・所蔵情報
「奈良名所独案内 全」 (金澤昇平編著 ・橋井善二郎出版・響泉堂刻銅版彩色・明治12年) ↓ 調査情報「平成17年12月〔2〕」に記述があります. ◇岐阜県図書館
森琴石調査情報【平成22年 6月】
奈良市御所に住む知人。
森琴石調査情報【平成23年 3月】
後、奈良に移住し志賀直哉を奈良に住むことを勧めた。 *志賀直哉が「九里四郎水墨画会 推薦」の随筆を書いた翌年(1944年)、長男正が亡くなった。
森琴石調査情報【平成23年 4月】
師匠森琴石が手がけた寺社関係の絵図には「天台宗総本山 比叡山延暦寺略図」や「奈良名所独案内 全」などの銅版画作品がある。伊藤石僊は、師匠森琴石に倣い、幅広い …
森琴石調査情報【平成21年 11月】
.. 発行者 大和國添上郡奈良町大字樽井六番屋敷: 辻本朔太郎: 発行蒹印刷者 大阪市南区心斎橋筋一丁目六十七番地屋敷: 松村九兵衛. 【B】中等教育毛筆画帖(教科書).
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