2012年11月2日 更新
『漢詩人子規』に響泉堂刻が記載
『常識では読めない漢字』に森琴石が掲載
加藤国安著『漢詩人子規』
今野真二著『常識では読めない漢字~近代文学の原文を味わう』
・・:読者をひきつける着眼点と内容
・・・広まってきた銅版画家としての「森琴石」
■去年~今年にかけて取り寄せた書物の中に<漢詩、漢字>に関する二つの書物があります。
■いずれも響泉堂刻・森琴石が記載されている書物です。
■昨今何かと雑事が重なり、資料をゆっくりと吟味する時間が無く集中力に欠けますので、出版者の書物の表紙に書かれた<内容紹介>を元に簡単にご紹介させて頂きます。
■ご紹介する二書はいずれも着眼点がユニークでとっつき易く、このような内容の授業なら漢文や俳句にもっと親しみを持ち、文学・国語好きの若者が増えるのに…と感じました。
■版画などの美術誌では無く、このような日本語や中国語の専門家が森琴石を取り上げる事が増えてきているようです。
■(正統派)南画家が(洋風の)銅版画もするというのは極めて異例であり、それが森琴石である…という事が美術研究者以外にも少しずつ広まってきたようです。
『漢詩人子規 俳句開眼の土壌』
・著者名 : 加藤国安
・出版者 : 研文出版(山本書店出版部)
・出版年 : 2006年10月
・頁数/サイズ : 355p・22cm
・価格 : 2500円
【響泉堂】記載 :162頁…<子規の筆写した梁川星巌の詩>の末尾
・内容
また子規が韻を確認する際に用いたと思われる『詩韻含英異同辨』
(明治12年7月刊/大阪響泉堂刻)が法政大学子規文庫に架蔵されるが…
・・・・・以下 省略します
『増補注解 詩韻含英異同弁』
(谷喬編/出版:此村彦助,同庄助/明治12年3月刊/響泉堂刻/ 縦12.5x横8.5cm)
参考
下は昭和10年刊のもの
・(発行者は田中太右衛門となり、意匠の大阪響泉堂刻の文字は削除されている)
昭和10年刊のものは、15年位前神田の古書店から
購入したもので、秩・上下巻の末尾頁3か所に
岱石の押印があった。巡り巡って師匠森琴石の
子孫の元に戻ったのである。
佐野岱石は少なくとも昭和10年迄は健在であったようだ。 ↑ 岱石の印
著者紹介
加藤国安: 1952年宮城県岩沼市生まれ。出版当時は愛媛大学教授(文学)。後名古屋大学教授に。著書に『越境する庾信―その軌跡と詩的表象―(2004/9)・『伊予の陶淵明 近藤篤山』(2004/11)・子規蔵書と『漢詩稿』研究―近代俳句成立の過程加藤国安 (2014/1) 他多数=いずれも研文出版
宣伝文
漢詩こそが子規のすべての始まりだった!若き日の漢学への傾倒から俳句革新への道が拓かれたことを、子規の漢詩をじっくり読み解きつつ実証する画期的論考。
紹介文(表紙に書かれた文)
漢詩も俳句も短歌もやるべしというのは、だれでもできるという提案ではないが、子規のめざす文学のあり様は明確で目標は高く、そしてたえざる向上心が求められる。この中から漢詩はもう時代遅れだからはずしてよい等という、上滑りの脱亜入欧的な態度はこの筋金入りの男にはまったく通用しない。かっては子規をそういう近代化の先兵と誤解した向きもあったけれども、子細に資料を読解すればするほど、子規にはまるで無縁な解釈だと分かる。子規という多面体をもれなく理解しようとすれば、これまで脇に放置されてきた彼の漢学と正面から向き合うよりないのである。(本書P.281より)
目次
子規の外祖父・藩儒大原観山
「子規」の号が背負うもの
観山の詩業を学ばん―子規自筆「観山遺稿」
頼山陽に学び、凌駕せん―所蔵漢籍<山陽詩集>
俳句の季題分類の契機―自筆漢詩選「歳晩類集」から
漢詩創作の座から俳句の運座へ
漢詩とは何か―所蔵漢籍『冷斎詩話』
漢詩と俳句・短歌の同一主題のコラボレーション
漢詩の筆写―忘れられた重要写本「随録詩集」
閑話休題 架空トーク―松山の愚陀仏庵にて
子規漢詩の最高傑作「岐蘇雑詩」三十首―俳句革新と同時期に
改革者子規のパワー―李白の豪放飄逸
子規の写生開眼、及び漢詩と俳句のコラボレーション
大連・金州へ、そして帰国ー重かった中国体験
「俳句と漢詩と二致あるに非ず」論
晩年の子規と漢詩―漢籍の慰籍
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『常識では読めない漢字~近代文学の原文を味わう』
・著者名 : 今野真二
・出版社 : すばる社
・出版年 : 2013年8月
・頁数/サイズ : 255p・19cm
・価格 : 1620円 1
・森琴石掲載 : 124頁
・上段=『月世界旅行』(ジュール・ヴェルヌ)内<巨大弾丸内部之圖>が掲載
・下段=上段の図は、森琴石が原書から翻刻した図である事、
・・森琴石の精密銅版画が22葉附載されている事、
・・明治19年の再販本は「定價金壹圓二十銭」とある事、
・・・・(当時うどん1杯1銭、昼食代が3銭~5銭であったとされる事から
・・・・・『月世界旅行』の値段はランチ40回分に相当すると説明)
『月世界旅行』(図は森家蔵)
(訳述人井上勤/出版人三木佐助/明治19年9月刊/291頁/縦18.5x横12.5cm 挿画翻刻森琴石)
第20図
・・・・・・・・・・(枠のサイズ 縦14.5x横9.3cm)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・右端
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大坂響泉堂刻
著者紹介
今野真二:1958年、神奈川県鎌倉市生まれ。1982年、早稲田大学第一文学部日本語日本文学科卒。松蔭女子短期大学講師、助教授、高知大学助教授を経て、1999年、清泉女子大学文学部助教授。現在、同大教授。日本語学専攻。2002年、『仮名表記論攷』(清文堂出版刊)で第三十回「金田一京助博士記念賞」受賞。
紹介文(表紙に書かれた文)
近代文学の知的遺産にふれる旅
漱石、鴎外、一葉、藤村、荷風、白秋・・・・明治・大正の名作を「原文」で味わいながら語彙力と発想力が鍛えられる、まさに「一石三鳥」の漢字読み取り練習帳
振り仮名なしには讀めませぬ(淚)
漢字のつかい方が今よりはるかに自由だった時代の名作に登場する漢字は現代人が読めないものばかり。明治の文豪たちが奔放につづった、ユニークすぎる漢字表記に“たっぷり、どっぷり”つかる全二百問。
目次
第1部 漱石作品の漢字表記を味わう―漱石先生、その漢字の読み、頓と見当がつかんぞなもし。
第2部 鴎外作品の漢字表記を味わう―森軍医殿、その漢字の読み、味わい深くて眩暈がします。
第3部 近代黎明期の漢字表記を味わう―諭吉、逍遙、そして新聞など、漢字が「自由」だった時代。
第4部 明治中期の漢字表記を味わう―一葉、紅葉、藤村、蘆花、涙香らの名文・名調子を支えた難読漢字たち。
第5部 明治後期の漢字表記を味わう―上田敏、二葉亭四迷、花袋、荷風など、時代と共に収斂していく難読漢字たち。
第6部 白秋作品の漢字表記を味わう―近代詩に新風を送り込んだ巨匠の、異国情緒あふれる難読漢字の数々。