2014年3月29日 更新
『高知県管内阿波国改正図/武市秋香』
原図者<武市秋香>は徳島の漢学者
日本で未確認の地図
カリフォルニア大学バークレー校「東アジア図書館」のみで確認
■森琴石 調査情報【平成20年 6月】で記述しましたが、森琴石が銅刻した『高知県管内 阿波国改正図』という地図がカリフォルニア大学バークレー校「東アジア図書館」に所蔵されています。
■同地図は日本では未だ確認されていません。
■「東アジア図書館」には森琴石著、或いは響泉堂刻の地図が6点所蔵されており、一部の地図はインターネットで画像が公開されています。
■原図者「武市秋香」については長らく人物像が不明でしたが、昨年頃から武市秋香の名でGoogleブック検索をしますと幾つかの資料名が出て参りました。
■今年1月、そのうちの一つ『阿波人物志』を取得しましたので、武市秋香の簡単な伝記をご紹介致します。
■尚この機会に『高知県管内阿波国改正図』を発見した経緯を残して置きたいと、下方に記述致しました。
■【平成20年 6月】に記述した推測の人物と、略伝で知った人物とはかなり違っていました。
■『阿波人物志』には、出版人の生島恒次郎と思われる「生島竹洲」や、森琴石と親交した「胡鉄梅」に師事したという画家の氏名もあり、胡鉄梅の徳島での足跡を知る事が出来ました。
■「平成18年6月【2】」で記述していますが、同図書館の日本古地図コレクションは三井宗堅が収集したものです。
『高知県管内阿波国改正図』は徳島市や鳴門市のどこかに残っていそうなはずなのですが、日本国内では未だ確認されていない地図なのです。
皆様方からのご情報をお待ち申し上げます。
『高知県管内阿波国改正図/武市秋香』確認の流れ
★2006年(平成18年)5月、カリフォルニア大学バークレー校「東アジア図書館」での『高知県管内阿波国改正図/武市秋香』の書誌データをインターネットで確認、データをエクセルにコピーする。
以下は、森琴石HPに掲載したもの及び石松氏とのメールを保存した分の英文です。
『Kochi-ken kannai Awa no Kuni kaiseizu / Takechi Shuko.』
Author
Takechi, Shuko.
Title
Kochi-ken kannai Awa no Kuni kaiseizu / Takechi Shuko.
Publisher
Kochi kenka Awa no Kuni Takashima-mura : Ikushima Kojiro, Meiji 10
[1877].
Description
1 map : col. ; 48 x 72 cm., folded in cover 17 x 12 cm.
Note
Copperplate print. In Japanese.
Oriented with north to the upper left. Relief shown by hachures.
Includes list of tourist attractions and local products and distance chart.
Inludes legend.
Engraved by Mori Kinseki.
訳
著者
武市秋香
タイトル
『高知県管内阿波国改正図/武市秋香』
出版者
高知県下阿波国高島村 生島恒次郎 明治10年(1877)
概要
彩色地図:48x72cm カバー:17x12cm
注
銅版印刷 日本
左上が北。地形図、観光名所、特産品、距離、図表の凡例あり
刻者 森琴石
Kōchi-ken kannai Awa no Kuni kaiseizu / Takechi Shūkō. Takechi, Shūkō. Copperplate print. In Japanese. Oriented with north to the upper left. Relief shown by hachures. Includes list of tourist attractions and local products and distance chart. Inludes legend. Engraved by Mori Kinseki. Kōchi kenka Awa no Kuni Takashima-mura : Ikushima Kōjirō, Meiji 10 [1877]. image jpn Awa Region (Japan) Maps. Tokushima-ken (Japan) Maps. Awa no Kuni zenzu /
★英文のデータに基づき日本の図書館での所蔵情報を調べたが、日本では確認されずなかった。
★2006年(平成18年)6月、バークレー校に『大日本海陸全図 全』などが所蔵されている事を「森琴石調査情報」で紹介する。⇒「平成18年6月【2】」
★2006年(平成18年)12月、同館に問い合わせる。
英語も不得手な私は、アメリカに住む私の甥※の協力を得て(森琴石紹介・略年表の英訳も依頼)、同館との連絡を取り持ってもらいました。
●図書館の担当者の方は「石松久幸」という日本人で、日本語でのメールが可能と分かり
ました。
※(筆者とは歳の差が少ない)甥は、化学者としてアメリカに永住し、研究の傍ら『とにかく通じるべんり英会話―かんたんフレーズ・とっさの一言』や『その英語では通じない―実体験でわかった正しく伝わる言い回し』などを著しています。
★以後、久松先生とは3回ほどメールでやりとりをさせて頂きました。
我が家の資料データは、外付けハードディスク損壊の為殆ど失いましたが、
森琴石HP:調査情報の原稿の6割をCDに保存していました。
たまたま同じ頃に保存していたメールが残っていました。
森⇒石松氏
バークレー校「東アジア図書館」に所蔵されている森琴石の地図を4点確認しています。
NO1:大日本海陸全図
NO2・大日本九州一覧之図
NO3:阿波国図
NO4:Kōchi-ken kannai Awa no Kuni kaiseizu があるようですが、
NO4のKōchi-ken kannai Awa no Kuni kaiseizu は恐らく「高知県管内阿波国改正図」と書くと思われます.
Takechi Shūkō、Ikushima Kōjirōの正確な漢字が知りたい、同地図をインターネットで画像閲覧の可否をお尋ねしました。
石松氏からの回答
●地図のタイトルの読みは正しい。
●たけち しゅうこう は 武市秋香
いくしま こうじろう は 生島恒次郎 と書く。
●「高知県管内 阿波国 改正図」の画像閲覧は出来ない。
●「東アジア図書館」には他に『掌中日本全図』もあるとの 事でした。
森⇒石松氏
藤井新助Fujii Shinsuke 著/森琴石刻『地球新図』(1875年)も所蔵されているようだと、と報告致しました。
備考
石松久幸氏について
東京都生まれ。UCバークレー校・東アジア研究図書館日本部長。
慶應義塾大学文学部図書館情報学科を卒業後、メリーランド大学図書館情報学大学院に派遣され渡米。同大学院を卒業後、メリーランド大学、シカゴ大学図書館等を経て現職に。著書に『バークレー・クラブ』(PMC出版)、『アメリカほたる』(PMC出版)、『おじさん漂流記inカリフォルニア』(本の友社)など。また、近年は古地図のデジタル化プロジェクトに尽力されている。 -ベイエリアで暮らすーより転載させて頂きました
★その後、同図書館の書誌詳細データがインターネットに流れなくなりました。
★武市秋香や生島恒次郎の人物が特定出来ないままなので、HPには出さないでいたのですが、このままではせっかくの情報が埋もれてしまうと、森琴石 調査情報【平成20年 6月】で 推測を交えたご紹介 をした次第です。
「武市秋香」について
藤井喬著『阿波人物志』より
武市秋香 たけいち しゅうこう(1837~1894)
漢詩人。篆刻家。
徳島中通町の人。
天保八年生れ。明治11年五月、編集人となり「嚶鳴詩文」を創刊し、
十三年九月、十一号で終刊した。
二十七年歿、年五十八.(年次表、古書通信)
年次表=阿波国漢学者・詩人出生年次表
・・・・・・・・・古書通信=雑誌「古書通信」 古書通信社
著出版
『嚶鳴詩文』=伊坂渉人編 武市秋香出版(1878~1880)
その他資料
『明治新聞雑誌関係者略伝』『日本古書通信』『明治期産業発展史資料(1)明治10年内国産業博覧会出品解説』『徳島の100人』 等
「武市秋香」・・・詳細不明だった理由
●読みを「たけち」と読んだ事、地図のタイトルに「高知県」とある事から、「管内」を念頭にいれず「高知人」として思い込んだ。⇒高知県で問い合わせしたが不明だった。
●大正10年刊『阿淡偉人伝』には「武市秋香」は収録されていなかった。
福田宇中編纂、蜂須賀侯爵題字の薄型小型古書。我が家が2007年頃取得した
(高額だった)
●因みに下の「生島恒次郎」については、出版人の住所が<阿波国高島村>とあるので、2006年11月、高島村の現地名<鳴門市>に問い合わせをしていました。
(森琴石 調査情報【平成20年 6月】注6に記述)
『阿波人物志』 より
出版人「生島恒次郎」と思われる人物
生島竹洲 いくしま ちくしゅう(1806~1878)
儒家。教育家。諱は文太。号は竹洲又枕流亭。
鳴門市鳴門町高島の人。
文化五年生れ。経史、詩文に長じ、新居水竹の推挙で藩の素読方となった。
後後天羽氏が学堂を設け、招聘を受けたので、退職帰郷し、徒に教えた。
明治十一年四月二十一日歿、年七十一.(板野)
板野郡史
胡鉄梅に師事した画家
大津圭邨 おおつけいそん(1850~1904)
画家。通称は縫之助。旧姓は山岡氏。伊之助好郷の養子となった。
家は藩の中老。幼にして書画を好み、明治十六、七年頃、清人胡鉄梅が来朝した際、
これに師事し、南画を学んだ。又書を能くした。三十七年歿、年五十五。
(阿波書画、書画、文人)
藤井喬著『阿波人物志』(昭和48年8月1日発行)
著者略歴
藤井喬 ふじい たかし
号は考志。明治42年11月生れ。
東京高等師範学校研究科卒。
元徳島県立阿波高等学校長。
現在、徳島文理大学、同短期大学教授。
著書に「涙草の研究」「阿波の土柱」「阿波文学散歩」「涙草原解」などがある。
感想
●「生島竹洲」の号名の<枕流亭>をどこかで見たような記憶があります。
●原図者「武市秋香」が漢詩家で篆刻家であった事から『高知県管内阿波国改正図』の出版人「生島恒次郎」は、「生島竹洲」の可能性が高いと思われます。
●森琴石は徳島の文人・教育者とはかなりの交流があり、当HPでも多数取り上げています。
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