呉 孟晋氏の論文…『野崎家における王冶梅の画業』に、森琴石が掲載

2018年9月2日 更新

 

呉 孟晋氏の論
『野﨑家における王冶梅の画業』に、森琴石が掲載

 

呉孟晋氏の論文
…野崎家(岡山県児島の塩業主)所蔵書画の調査に基づく
……野崎家=王冶梅の書画が纏まって所蔵
……野崎家に森琴石の書簡が存在

 

呉孟晋(くれ もとゆき)氏
独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部列品管理室, 主任研究員
2018年より<来舶清人の研究>に取り組んでおられます

呉先生の業績及び過去の執筆類は
―京都国立博物館ホームページ、研究員紹介- をご覧ください
https://www.kyohaku.go.jp/jp/gaiyou/research/t-kure.html

 

論文の概要
タイトル  :野﨑家における王冶梅の画業.
執筆者   :呉 孟晋 (京都国立博物館 )
発行年月日 :2018年3月28日
目次
 はじめに
 一 . 王冶梅について
 二 . 野﨑家来訪の経過
 三 . 野﨑家に伝わる書画作品
 四 「四季山水図」(十二幅. )について.
 おわりに
森琴石掲載箇所
文章・写真・注釈=3、4、7、8、9頁

野上家及び、王冶梅との関係は、
呉孟晋氏の論文の ‐はじめに‐、と ‐一・王冶梅について‐ の一部を
転載させて頂きました。
興味深い内容です
是非お読みください

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岡山大学大学院社会研究科『文化共生学研究』第17号 2018年 抜刷

野崎家における王冶梅の画業

呉 孟晋

はじめに
 江戸時代以降の近世日本に渡来した中国・清朝の文人は「来舶清人」といい、明朝末期から清朝初期の黄檗僧につづいて当時先端の文人文化を日本に持ち込み、日本の文人たちを大いに魅了した。とくに画事においては、享保(一七一六~一七三六)から文化・文政年間(一八〇四~一八三〇)あたりにかけて、「来舶四大家」に数えられる伊孚九、張秋谷、費漢源、江稼圃が来泊地の長崎にて当地の文人たちとかかわりをもち、池大雅や田能村竹田ら江戸の南画壇に大きな影響を与えたことはよく知られている。その掉尾を飾るのが、清朝末期の光緒年間(一八七五~一九〇八)、すなわち明治時代の日本に渡来してきた文人たちである。①
アーネスト・フェノロサや岡倉天心らによる西洋の視座からの日本画改革が模索された時代において、従来の南画は「つくね芋山水」と批判されることとなった。しかし京阪神を中心にして長崎にいたるまでの西日本地域では、東京を中心としたフェノロサたちの動きとは関係なく、詩・書・画の三芸壇すべてにおいて来舶清人の需要は依然として高いものがあった。彼らは各地の書画家や漢学者たちの手引きで雅会を開催し、詩書画の応酬をとおして生計を立てた。本稿でとりあげる王冶梅(一八三一~一八九一~?)もそうした需要に応えるべく、光緒三年(明治一〇年・一八七七)に初めて長崎の地に降り立った来舶清人のひとりである。

明治一六年(一八八三)の春、王冶梅は何度目かの来日にあたって、岡山県児島郡味野村(現倉敷市児島味野)にて製塩業をいとなむ野崎家に約一月半滞在して、三〇件弱の書画作品を製作した。②   茶事につうじて、煎茶道も嗜んでいた野崎家にとって、来舶清人は喫茶をとおしてた明清の文人文化を体現した存在として歓迎すべき賓客であり、王冶梅の来訪は、彼に前後して滞在した胡鉄梅(一八四八~一八九九)や陳曼寿(一八二五~一八八四)、衛鋳生(生卒年未詳)、王冶本(一八三五~一九〇八)らとともに大きな足跡を残すこととなった。

なかでも、長期滞在した王冶梅については作品の数が抜きん出て多く、彼の在日期の代表作ともいうべき四季折々の景観を十二幅の山水図に描き分けた「四季山水図」(一八八三・野崎家延慶歴史館蔵)を含んでいる。そのため、王冶梅は野崎家を訪ねた来舶清人のなかでも象徴的な存在といえよう。
本稿は、野崎家塩業歴史館が所蔵する王冶梅の書画作品を概観することで、野崎家と王冶梅のかかわりを明らかにするものである。作品に描かれた主題や題識はもちろん、野崎家の業務日誌に相当する『売用日記』や当時の新聞・雑誌に残る王冶梅の関連記事を紐解くことによって、野崎家における王冶梅の画業を整理してみたい。これまで来舶清人の活動の実態については、博物館や美術館などにおいてもまとまった収集がなく、散在する作品をとおして断片的にうかがうことしかできなかった。野崎家における王冶梅作品は、そうした空白域を埋める貴重な手がかりとなるものであり、明治期の日本においても衰えることになかった詩書画にたいする尊崇と憧憬の様相を明らかにするものである。

一・王冶梅について
 王冶梅は名が寅で、江蘇江寧(現南京)の人。③  詩書画に秀でた職業文人である。咸豊三年(一八五三)以降は太平天国による動乱のため、六合、棲霞山、興化など江南地方の各地を転々とし、画を鬻ぎながら糊口を凌いだ。上海に客寓してからは、とくに現地の日本人の間で画名が高まった。光緒三年(明治十年・一八七七)、日本人有志に請われて長崎を訪れたことを端緒にして、以後、日中間を頻繁に往復する。とくに京阪神を拠点とし日本各地を旅して雅会を開催したり、有力な顧客のもとに滞在したりして潤筆料を得た。野崎家での画作もそうしたなかでのことである。出版事業にも深く関わり、『歴代名公真蹟縮本』(一八七九)や『冶梅石譜』(一八八一)、『冶梅蘭竹譜』(一八八二)などの画譜を編み、明治初期の日本の南画界に大きな影響を及ぼした。
野崎家における王冶梅の画業をみる前に、彼が日本滞在時に描いた典型的な作品のいくつかにふれておきたい。
王冶梅は明治一〇年(一八七七)に初来日した後、翌十一年四月に病を得ていったん帰国するが、七月に再来日し、京都の老舗の調香・文具店である鳩居堂に寄寓する。明治十二年(一八七九)五月に再び帰国。同年夏、三度目の来日したのちはしばらく日本にとどまり、明治一八年(一八八五)に帰国した。④ おもに京阪神にいた王冶梅は、儒学者の藤沢南岳(一八四二~一九二〇)や南画家の森琴石(一八四三~一九二一)をはじめとする京阪神の文人と交流したりしていた。数多くの画譜出版は森琴石らとの協業による成果であり、明治期の来舶清人のなかでも、最も深く日本の文人社会に溶け込んだひとりであったといえる。⑤
以下省略します

注釈
① 明治期の来舶清人の概略については、陳捷「一八七〇~八〇年代における中国書画家の日本遊歴について」『中国:社会と文化』二四号、二〇〇九年七月を参照のこと。

② 野崎家にゆかりのある美術工芸品については、岡山県立美術館学芸課編『塩田王野崎家:ゆかりの人と作品』公益財団法人竜王会館、二〇一二年と同館編『塩田王野崎家:個性集う地方サロン』二〇一三年にて紹介されている。
③ 王冶梅の伝記については、次の先駆的な研究に詳しい。鶴田武良「王寅について:来舶画人研究」『美術研究』三一九号、一九八二年三月。
④ 「画人・書人略伝」『橋本コレクション 中国の絵画:来舶画人』展図録、渋谷区立松濤美術館、一九八六年、一〇八頁。
西上実「王冶梅と森琴石:近代文人画家と銅板出版事業の関わりについて」『中国近代絵画と日本』展図録、京都国立博物館、二〇一二年

 

※『野﨑家における王冶梅の画業』の内容は、全文インターネットでご覧頂きます
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/55794/20180328142543578677/scs_017_(1)_(21).pdf

 

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森琴石と王冶梅の関係
●日中交流、日中書画研究者の研究対象となる
・・陳捷氏・西上実氏・呉孟晋氏・・
●王冶梅は森琴石と親密交際していた
 ・・・書簡&筆談記録が残る
・・・・・…<多くの清人が地方の名家を訪問したのは、皆自分が
紹介した…>と、記している
 ・・・多数の森琴石著<銅版袖珍本>への揮毫・、銅版書誌を共同出版
●野崎家への紹介は森琴石の可能性あり

今後の予定
●陳捷氏(現東京大学大学院人文社会系研究科 教授)は、
<明治時代の銅版印刷について>調査中で、今後論文などで発表予定。
呉孟晋氏
<来舶清人の研究>を深められるそうです。

日中文化交流の第一人者により、森琴石と来舶清人は研究対象となり続けています。
今後の成果が待ち遠しいものです

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森琴石と王冶梅

森琴石HP 掲載カ所

清国人の書簡
https://www.morikinseki.com/shiryou/syokan.htm#sinkoku)に略紹介

2016年4月12日
森琴石属 「胡鉄梅・王冶梅 牡丹蛺蝶図」:2月8日 日経朝刊に掲載
https://blog.morikinseki.com/?p=2440

2015年5月8日
森琴石らの交流を記述した論文・・・中国で出版 でご紹介
( https://blog.morikinseki.com/?p=497 )

2013年4月12日
陳 捷氏の論文(森琴石と胡鉄梅などの交流を記述)が英語版で出版
https://blog.morikinseki.com/?p=497

2012年1月13日
「中国近代絵画と日本」展、解説付総目録
https://blog.morikinseki.com/?p=240

 

その他、森琴石HPトップ頁
下方 google 検索機能 「王冶梅」でご検索下さい。多数出てきます。

 

 

 

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