2020年9月6日 更新
『達爾頓氏生理書図式』(明治11年4月刊)
扉下方の文字…大阪森響泉堂銅刻 とあり
●2020年7月後半、森琴石の資料をインターネットで探していたところ、某人気フリーマーケットサイトに、明治11年1月刊行の『爾頓氏生理学書図式』が出ていました。
●出品書誌の画像は、扉の上部に2カ所蔵印がある以外、背表紙の上方と下方が経年で破損しているものの、中身の銅版印刷は極めて良好な状態で写っていました。
●某古書サイトでの販売価格は3万5,000円ですが、これは何と2000円なのです。何年か前には7・8万円、いや10万円以上の値がついた事もあり、到底買えないとあきらめていました。今回の価格は余りにも安く信じられない気持ちでしたが、これは “絶対に買わなければ!”と、躊躇せず<購入>にクリックしたのです。。
●届いた書物の手ざわりを確かめ、表紙を見、めくった瞬間、余りの嬉しさに気持ちの昂りをしばらく抑えきることが出来ませんでした。
なんと!!
●扉の飾り枠の下方にある「・・・・・・・刻」とあるところを見ると
<大阪森響泉堂銅刻>となっているではありませんか!
●扉の上方に押された<所蔵印>から推測すると、数々の戦火や災害を逃れ、場所を変えながらも、大事にされていた事が窺えます
●蔵印から察して出品者の方は “ゆかりのある人” かも知れず、“大事にしてくれる人に持って貰いたい!”と願って出品して下さったように思えてなりません。
●『達爾頓氏生理学書図』の翻訳者 物部誠一郎は、大阪病院の医師で、緒方惟準や緒方拙斎と同僚だった。
備考
生理学とは…
人体を構成する各要素(それは組織、器官であったり細胞であったりする)がどのような活動を行っているかを解き明かす学問。(byウィキブックス)
2018年ノーベル賞生理学・医学賞を受賞した「本庶佑」先生のご研究もこの分野です。
※物部誠一郎は、森琴石の晩年の主治医だった可能性があり(森琴石日誌)、森琴石の周辺には、この分野で高名な 緒方惟準・緒方拙斎・堀内謙吉などがいます。
●森琴石ホームページ
森琴石門下 堀内謙吉 調査情報平成23年5月
●堀内謙吉は、緒方洪庵の外孫として誕生、
鼻咽喉科の名医として、
『らんだむ書籍館 86』 …小林昭夫氏(千葉県松戸市)
らんだむ書籍館 (morikinseki.com)
中江兆民「[縮刷]正続 一年有半」
●堀内謙吉の父、堀内國利は、明治3年、陸軍軍事病院を緒方惟準と共に創設した。
脚気撲滅に貢献した人物。
●脚気論争については
「柏崎通信」で 梶谷恭巨氏が詳しく記述されていますhttp://kashwazakitushin.blog.shinobi.jp/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E5%AD%A6/%E8%84%9A%E6%B0%97%E8%AB%96%E4%BA%89%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E7%B6%9A%E3%81%8D%EF%BC%89_119
。
●その他
森琴石ホームページ
2013年1月17日記述
『緒方惟準伝 緒方家の人々とその周辺』に、森琴石周辺人物が登載
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『爾頓氏生理書図式』の概要
明治11年4月刊行
サイズ 縦24.7㎝x横17.5㎝
扉 背表紙
(広島県公立三次病院の蔵印)他 (上方欠損)
識文=物部誠一郎
概要 (間違っているかも知れませんが・・)
前文略
自分は(著者物部誠一郎)、最近(明治11年)大阪医学校の教授に任命をされた。教授するにあたり、アメリカの達爾頓氏(ダジトン)の生理学書を教材にする事とした。ダジトン氏は紀元1875年(明治6年)生理学書を著した、この本は議論が精確で論旨がはっきりしている。自分はこの本を(妥協を許さず)改良して使っている、特に図式は織微詳密にするため、木版で模写すべきで無いと考え、銅版で別に鐫刻した。斯道の学者に読んで頂き、研究の一助になる事を切に願う。
第46図(膵臓・十二指腸) 第184図(交感神経 、神経節)
奥付 1
奥付 2
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~参考まで~
緒方惟準は医業を離れ隠居した際、有馬の別荘「翠紅庵」を良く訪れたという。
緒方拙斎著「南湫詩稿 第2集」には、森琴石が「翠紅庵」を描いています。
調査情報 平成23年2月
現在「翠紅庵」は、森琴石の生家 有馬温泉「中之坊・有馬グランドホテル」が所有されているそうです。
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その他 森琴石ホームページでの記述カ所
https://www.morikinseki.com/chousa/h1603.htm
… にしお きちたろう 注8」は、「山陽新報」の創設者である。 □. 明治9年、 文部省刊「馬耳蘇氏複式記簿法」(馬耳蘇マルソ 著)・明治11年、「達爾頓氏 生理学図」(達爾頓 ダルトン著)など、簿記や医学の翻訳教科書にも関与して いる。